| セイシン企業の先端技術のご紹介にあたり
セイシン企業は、これまで半世紀にわたり、真剣に“粉”と向き合って参りました。創業当時は、ものを創るうえで基礎となる“粉”の物性、なかでも粒度分布が重要であるとの認識から光透過遠心沈降式粒度分布測定器「ミクロン・フォト・サイザー」を世界に先駆け世に送り出しました。その後、粉体物性測定器は磨きをかけ、今では現場に適した自動化を実現しております。
会社の開発の歴史は粉体物性測定器にとどまらず、ジェットミルを初めとする粉砕機、気流式分級機、造粒機、気流式乾燥機、気流式殺菌機、粉体球形化装置など、多岐に渡る粉体加工装置を開発してまいりました。さらに、自社開発した粉体加工装置、業界で実績のある粉体加工装置を利根川工場に設備し、受託加工業務を本格的に始めました。お客様からの要望に応じた粉作りから多くの経験を積み上げ、結果、粉体加工に関する多くのノウハウを蓄積して参りました。
弊社の創業者植田は常に新しい挑戦を業界に先駆けておこなってまいりました。明日の日本を作る、明日の未来を作る拘りは社員の誇りでした。この精神は我々開発に従事するスタッフの原動力となっております。
ご存知の通り、粉体加工技術は、電子・電気、化学、医薬、食品、農業とありとあらゆる分野で利用されております。近年は、従来にない機能性を付与した機能性粉体の要求がますます高まっており、更なる粉体加工技術の発展が求められております。しかし、これまでのように単位操作技術を開発し、ご提供するだけでは、新しい機能性粉体の効率的創製は困難であります。そのため、セイシン企業では、機能性粉体を加工するためのハード・ソフトを含むプロセスの開発に積極的に取り組んでおり、その中からお客様にご提供できる技術を日々生み出しています。
セイシン企業では、これらの先端技術を社内にとどめるのではなく、その多くを社外に発表し、技術的内容をご理解いただき、セイシン企業の先端技術をご利用いただく事で、社会発展に寄与していきたいと考えております。野心に燃えるセイシン企業の集団は目一杯の理想を探し求め、常に新しい何かを創り出して参ります。年間4回、定期的に先端技術の発表をホームページに掲載して参りますので、是非、ご一読いただければ幸甚です。
株式会社セイシン企業
仙台研究所 主任研究員 津吹幸久
北九州研究所 主任研究員 小野和博
後見人 会長 岡本 浩 社長 三島重信
| 技術資料
2021年6月(No.1) 粉体粒子の球状化・造粒・複合化を可能にする装置(NSM)の開発 Development of a Device called NSM enabling Spheroidization, Agglomeration and Surface Coating for Powder Particles |
【要旨】本稿では、弊社が開発した粉体粒子の球形化、造粒、複合化を可能にする新しいタイプの高速攪拌型粒子球状化装置「NSM」を紹介する。NSM は、Natural Graphite Spheroidization Machine の略語であり、当初の目標は、黒鉛粉体粒子の不規則な板状形状を球状化することであった。黒鉛粉体は、粉砕で製造されるが、へき開性由来により粉砕物(粉体)の粒子形状は不規則であり、それを何らかの方法で球状化できれば、粉体粒子充填構造が密になり、導電性等が向上するなど粉体特性の改善が期待できるからである。開発グループは、装置の基本構造を縦型の粉体処理容器とし、その底面中央に高速回転できる攪拌翼を設置する構造とした。容器に黒鉛粉体を投入して装置運転した結果、黒鉛の粒子形状が球状化できることを確認した。また、黒鉛粉体に対してバインダーを添加して NSM を運転したところ、黒鉛粉体が適度な粒子径の造粒体を形成し、その粉体のタップ密度が向上することも明確にした。さらに、例としてポリエチレン樹脂(PE)粉体(粒子径:100~200µm)と黒鉛粉体(平均粒子径=約 8µm)を NSM で処理すると、PE 粒子表面が黒鉛微粒子で被覆(コーティング)されることも確認している。 NSM は、前記のとおり、黒鉛の球状化のための装置であるが、その後実施した多数の実験から、その能力が、黒鉛に留まることなく他の粉体に対しても発揮できる可能性が高い。粉体加工装置 NSM が粉体を取り扱う産業分野で活用されることを願っている。 |
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